2022-01-31

今年の抱負2:次のキャリアを考える -教材開発から学習インフラ開発に移行するために

東京大学で特任助教、特任講師を続けて約10年ということで、そろそろ次のキャリアを考えたいなと思っています。

長期的な目標はずっと「人類全体が歴史を繰り返さないよう、歴史から学べる新しい学習インフラを開発する」なのですが、これを実現するにはどのキャリアに進むのが良いのかをずっと悩んでいます。

というのも、これまでは色々な教材開発をしつつ授業実践をし、新しい学習の風景を開拓するというスタイルで研究をしてきたのですが、論文だけだと現実の世界に教材を広める力が弱いため、「新しい学習インフラ」にするにはハードルがあるなと感じたからです。ちなみにここでいう「学習インフラ」とは、学校制度、セサミストリートやNHKのような教育テレビ、Scratchのようなプログラミングの構築・共有ができるWEBサイトなどをイメージしています。

それでグルグルと色々なことを考えているのですが、単発の教材開発をする研究者から、学習インフラを開発する研究者に移行するには、大きく3つのポイントがあるなと感じました。

1つ目は、学習インフラを支える教育理論・思想を構築することです。新しい学習インフラをきちんと構築するには、教材や学習コンテンツがバラバラに存在しているだけではなく、それらを編み上げるルールとなる理論や思想が必要になります。これがないと、コンテンツはバラバラと存在するけれども、誰にも使われない状態になります。特に学校制度については理論や思想がしっかりありますが、インフォーマルな領域にも絡むような学習インフラを考えるのであれば、新しい教育理論・思想が必要だなと感じています。個人的にはデューイの教育理論が好きなのですが、どうアップデートできるかはじっくり考えたいなと思っています。

2つ目は、企業との連携です。東大では共同研究プロジェクトを担当することが多かったのですが、やっぱり企業と連携すると一気にインフラとしての実現度合いが高くなるなと感じました。例えば、日本版の「大規模公開オンライン講座(MOOC)」となったgaccoの講座を開発・評価する共同研究プロジェクトに携わっていたのですが、これは研究的な理念を「学習インフラ」にする理想的な事例だなと思いました。資金的な面だけでなく、人的な面でも、やはり一研究者として開発するだけではなく、色々な人と連携できる研究者になる必要があるなと感じています。

3つ目は、現場での利用事例を増やすことです。いくら「モノ」を作っても、教育現場での利用事例がないと、学習のイメージが湧きにくく、「心理面でのインフラ」にはならないと感じました。これは、Google for Educationとの共同研究プロジェクトで、Scratchを小中学校の授業で活用するプロジェクトがあったのですが、長野県の大学と教育委員会と多数の学校の教員がチームを組んで事例をどんどん作り、共有していく中で新しい学習インフラになっていた様子を見て思ったことで、やっぱり現場に落とし込んだ利用事例は普及力のエネルギーになるんだと思いました。

ということで次のキャリアとしては、企業や教育現場と連携できるようなポジションにつきたいなと思っているのですが、それを実現するには、大学教員が良いのか、企業に所属するのが良いのか、NPOもしくはベンチャーを立ち上げるのが良いのか、現場の教員として良い事例を作りつつコミュニティを構築するのが良いのか、もしくは全部やれるのか、その辺りはまだ悩んでいます。

今年はこの辺りをじっくり考えつつ、次のキャリアに進みたいなと思います。