2022-01-28

今年の抱負1:研究の根を伸ばす

博士論文「歴史の応用を学習する方法の開発」を出してから8年が経ちました。 助教になってからは研究プロジェクトのメンバーとして論文を書くという生き方を10年近く続け、2021年は主著・共著あわせて10本の論文を出せましたが、最近、このままだと危ないなと思うことが多くなってきました。

それは、研究の「花」を咲かせるのに力を入れすぎて、「根」の手入れができていないのではないかという危機感です。

博士論文を書いていた時は、自分の研究哲学(主根)に沿って、領域の動向を整理し(側根)、個々の先行研究をレビューしていました(根毛)。下の絵でいうと、黒の根の部分です。

ところが助教以降になると、読んだ論文が年々自分の根に位置づけられなくなることが増えてきました。これには大きく2つの原因があると思います。

1つは、単純に読んでいる先行研究の数が増えて処理しきれなくなってきたからです。プロジェクトや輪読会などを通して、自分の領域の論文はできるだけインプットするようにしているのですが、絵でいう青の点のように「なんとなくこの辺に位置づくな」とはイメージできるものの、自分の側根と具体的にどう繋がるかまでの解像度で考える時間がなく、根の伸び具合がぼんやりしていることが増えました。

もう1つの原因は、研究プロジェクト配属の場合、「自分の専門領域の根」ではなく、「研究プロジェクトごとの根」を育てる必要があるのですが、それをどう自分の根に取り込めるかを考える時間がなくなってきたからです。特に研究プロジェクトの場合は、一定期間のうちに「花」を咲かせることが求められるため、自分の根の手入れをする時間が後回しになりがちです。その結果、例えば「教育におけるAI」という側根のまとまりだけは持っているものの、自分の専門領域の根における位置づけがぼんやりすることが増えました。

じゃあ、どうしたらよいのか。

答えはシンプルで、博論よりメタな学術本を書くことだなと思いました。

つまり、絵の赤部分のように、博士課程の頃よりも哲学や思想(主根)を深くし、先行研究の領域(側根)を広げながら、大量の論文がどう位置づくのか(根毛)をきちんと文章でまとめていく。こういうフェーズが、博士課程を終えた10年目頃に必要になるんだろうなと思いました。

ということで、今年はなんとか時間を作って、地中に潜って根を伸ばしたいと思います。