学会論文賞をいただきました

全国社会科教育学会から、2016年 研究奨励賞をいただきました!2016年の学会誌『社会科研究』に掲載された論文の中から1本選ばれる、いわゆる論文賞です。大変光栄です。ありがとうございます。

受賞論文は先日掲載された、「池尻良平, 澄川靖信(2016)真正な社会参画を促す世界史の授業開発 : その日のニュースと関連した歴史を検索できるシステムを用いて. 社会科研究, 84, 37-48.」(http://ci.nii.ac.jp/naid/40020897177)です。

今回の受賞論文は、実は4年越しで形になったものでして、本当に多くの方に育ていただいたものだと思っています。ものすごく長くなりますが、感謝の意も込めて少し書きたいと思います。

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僕が卒業した「学際情報学府」という大学院は、学問と学問の際の領域を研究するところで、僕は「教育工学×歴史学習」の領域で研究をしていました。指導教官は「教育工学」の先生だったので、教育工学の知識や文化などは自然と身についたのですが、「歴史学習」に関しては東大に研究室がなく、自力で文献を集めて勉強するしかありませんでした。なので、海外の文献や論文を読みまくっていたのですが、その際、『社会科研究』という国内の学会誌があることを知り、20年分ほどレビューをしていました。

中でも原田智仁教授の論文は自分の研究関心と近く、度々引用させていただいていました。そんなこんなで無事修論を書き終わり、『日本教育工学会論文誌』に投稿して無事採録された後くらいから、「歴史学習」の方にも学会参加し、論文を書きたいなと思うようになりました。

そこで2012年、当時博士課程2年生だった頃に、投稿論文用の原稿を2種類持って、まさに今年の開催大学である兵庫教育大学の原田智仁 教授に相談に伺いました。その時に、全国社会科教育学会の価値観や論文を執筆する時に気をつける方が良いこと、オススメの海外の文献、関心の近い全国社会科教育学会の先生方などを教えていただきました。

同じく2012年、初めて全国社会科教育学会全国研究大会に参加し、「歴史的知識の現代社会への転移に関する考察」というタイトルで発表をしました。その年の懇親会は、原田先生と当時他大学の院生で知り合いだった斉藤くんの2人としか話せる人がおらず、何とも寂しかった記憶があります。

その後、先ほどの発表原稿を修正して『社会科研究』に投稿したのですが、査読で不採録という結果になりました。僕が査読で指摘されたことを十分に理解できなかったのが原因でした。

翌年2013年の全国社会科教育学会では、斉藤くんの企画で「社会科教育研究は何のためにすべきか」というパネル式発表をしました。僕は「教育工学からみた社会科教育研究」という発表をしたのですが、司会をしてくださる草原和博先生と後藤賢次郎先生と打ち合わせをする機会があり、その際に「社会科教育」とは何かについてひたすら聞いていたのですが、それがとても勉強になり、ようやく査読で言われたことが何だったのかがわかり始めるようになりました。また、この年は受賞論文で触れている、ニュースと関連する歴史を自動で提示するシステムの構想をポスターで発表したのですが、大御所の先生方が気にいってくださったようで、論文投稿に向けて頑張って、とエールも贈っていただきました。

2013年4月、特任助教として研究者番号を与えられ、スタートアップという新米研究者が研究予算を獲得するための科研費を申請しました。結果が返ってくるのは9月なので、それまでは博論を執筆する日々を過ごしていました。

そんな時、大学院の情報処理系の友人である浅野くんの紹介で、コンパイラを研究している東京理科大学の澄川靖信くんと出会いました。受賞論文の共同研究者です。彼はバリバリの情報科学の院生だったのですが、僕のシステムの構想を話した時にすごく興味を持ってくれました。僕もプログラミングに興味があったので、彼の紹介してくれた情報科学の勉強会に参加したりもしていました。

そんな折、さっきの科研費の結果が返ってきたのですが、結果は不採択。がっくりしながら澄川くんに話をしていたんですが、その時、彼が「面白い研究なんだし、予算がなくてもやりましょうよ」と声をかけてくれました。この時の言葉は僕にとってはかなり救いで、それからは一生科研費が通らなくてもこの研究を形にしてやるぞと思うようになりました。

そして2013年10月に科研費を再度申請。2014年4月に採択され、予算がつくようになりました。それからは洋書を片っ端から買ったり、学会に行って情報収集を重ね、歴史のデータベースを作ったり、澄川くんと一緒にプロトタイプ作りに試行錯誤する日々でした。いや、本当に試行錯誤しました。教科書から因果関係を700個くらい抽出したり、新聞記事のデータを5000件近く読んでラベル付けしたりしました。この時期は本当に血反吐を吐きながら研究してました。また、この期間に澄川くん経由で知り合った京都大学のアダム先生からも、専門的な助言をいただき、研究が大きく進みました。

そして、ある程度開発も進んだ2015年の全国社会科教育学会で、草原先生から課題研究「中等教育における主権者育成のための授業論」に歴史科の分野で発表しませんかというオファーをいただきました。ちょうど開発していたシステムの方向性とも合っていたので、ぜひと引き受けさせていただきました。事前にコーディネーターや登壇者の他の先生と原稿を見合っては助言をし合い、結局12ページくらいの発表原稿になっていました。当日の発表でも多くの方にお越しいただき、フロアの方々から多くの質問をいただきました。

この発表はきちんと論文にしようと思い、いただいた助言や質問をもとに修正を加えて、 2015年冬に『社会科研究』に投稿。いただいた査読にも何とか回答でき、2016年に採録になりました。

そして10月7日〜8日に開催された全国社会科教育学会の総会で、今回の受賞をいただいたのです。受賞を発表下さったのは、学会長の原田先生。そして場所は、偶然にも初めて訪問した際の兵庫教育大学ということで、感極まりました。(ちなみに授賞式は来年なので、着席したままジーンとしていました。)受賞後も、編集委員の先生から「自分のことのように嬉しいよ」と言っていただいたり、多くの先生方からお祝いの言葉をいただきました。
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ものすごく長くなりましたが、何が言いたいかと言いますと、今回の論文はこれまで書いてきたように多くの人と出会い、多くの人に育ててもらいながら書き上げられたものだということです。もっというと、科研費は税金から捻出されているものなので納税者の皆様のおかげでもありますし、研究以外は本当に何もできない僕をサポートいただいた大学の事務の方々のおかげでもあります(イタリアのナポリ付近の学会参加の際、事務の方が気付いて下さらなければ、僕はヴェネチアのホテルから会場に向かう羽目になっていました)。

なので、今回の受賞は「嬉しい」よりも「僕は恵まれてるな。ありがたいな。」という気持ちの方が強く、なんか昨日からしんみりしています。本当にみなさま、ありがとうございました

それと同時に、ようやく論文的にも「教育工学×歴史学習」の研究者になれ、「学際情報学博士」としてのステップを1つ進められた気がしました。次は、英語雑誌でのフルペーパー採録を目指しつつ、自分なりの教育理論や哲学を育てていきたいと思っています。

ありがたいことに、今年度も「オンライン上での協調的な歴史的類推を促すグループ編成システムの開発と評価」という題目で科研費をいただけました。査読中の論文1本、執筆中の論文2本と別の論文も頑張っていますが、こちらの研究もきちんと論文化できるよう心血を注いで頑張りたいと思います。